Smiley face
亡くなった息子を思い、涙をぬぐう母(手前)と兄=2024年6月16日、福岡県内、池田良撮影
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 長時間勤務と、同僚からのパワハラで精神疾患を発症し、2019年に採用1年目で自殺した福岡県の男性教諭(当時24)の遺族が、当時務めていた学校を所管する教育委員会などを相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。教諭をめぐっては、公務と自殺に因果関係があるとして公務災害に認定されている。教職が夢だったという男性。赴任からわずか5カ月余りで命を絶つまでに何があったのか。

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 母さん聞いて。ぼく、学校の先生になる――。

 小学5年のとき、男性は夕食の食卓で将来の夢を語り出した。

 憧れは、当時の担任の教師だったという。男性は字がきれいではなかった。担任はノートに、一つ一つ赤ペンで「とめ」や「はね」を丁寧に教えてくれた。ひざを曲げ、同じ目線で話しかけてくれた。見違えるように整った字が書けるようになった。あいさつや宿題などの提出物に厳しく、男性はやんちゃだった性格も少しずつ穏やかになった。自分を成長させてくれた教師の姿が、目標になった。

 地元の大学の教育学部に進学。大学4年の教員採用試験は不合格だったが、再挑戦のため留年し、小学校で臨時の教員として働きながら、夜遅くまで机に向かった。母親(60)は部屋の電気が付いたまま寝落ちする男性を起こして、布団で休ませることもあった。

 2019年度の採用試験で合格。4月、自宅近くの小学校に赴任した。新任だが30人余りの3年生の担任を任された。帰宅後も、夜遅くまで児童の給食当番などの係決めの掲示板をつくっていた。「子どもたちの名前を早く覚えないと」と母に笑みを見せていた。

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